衆院選に向けての雑感

時事

特にこの記事で主張したい事は無いのですが、これまでの総裁交代と衆院選に向けての雑感を書いておきたいと思います。

高市早苗さん負けて残念

先の総裁選では、私はアベノミクスを推していた高市早苗さんを応援していたのですが、石破茂さんに僅差で敗北してしまい残念に思っています。

石破茂さんは以前からアベノミクスに批判的だったので、石破政権になったらインフレ目標政策も中断して、またデフレ不景気に逆戻りするのではないかと不安を感じていました。

しかし、実際に石破政権に変わってみると、石破総理はこれまでのアベノミクスに批判的な政策をことごとく撤回して、金融緩和継続・低所得者支援の財政支出・日銀の独立性は尊重するなど、アベノミクス継続の方針を打ち出しました。

内閣総理大臣の権限は意外に弱い

いろいろな評論がありますが、石破政権も自民党政権である以上、これまで比較的上手く行っていたアベノミクス路線やTPPやG7中心の外交政策などを大きく撤回するような、根本的政策変更はできないようです。

安部派のバックアップを持つ安倍政権が特殊だっただけで、通常は総理の権限は小さく与党の合意を覆すほどの大きな権限は持てないものなのだそうです。
総理は衆議院の与党から選ばれます。
米国大統領や都道府県知事のように、直接選挙で選ばれる存在ではありません。
そのため、衆議院の支持と協調無しには、政権を維持できないのです。

菅総理も岸田総理も基本的な安倍政権路線を継承していました。
本人が積極的に継承した側面もあるのでしょうが、大きく変更する事ができないという側面もあるのでしょう。

つまり、過去の政策から大きく政策変更した安倍政権路線以降は、その政策が上手く回っているのなら、変更するのは難しいのでしょう。

つまり、石破政権がいくら安倍政権を嫌っていても、安倍政権路線を覆す力は無いということです。

安倍総理や菅総理・岸田総理のように積極的に安倍政権路線を推進することは無いかもしれませんが、後退する事はなさそうだと思っています。

石破総理は何をやりたいのか分からん

石破総理の話を聞いていると、総裁選前の政策をことごとく撤回していて、「この人は一体何がやりたくて総理になったのだろう」と疑問を感じざる得ません。

おそらく総理になって特にやりたい政策は無いのではないかと思われます。

女系天皇や選択的夫婦別姓など、先行き不透明な部分もありますが、おそらく何もしないし、できないでしょう。
過去に主張していた「アジア版NATO」や「財政均衡」「原発縮小」など政策内容も深く検討していたとは思えない現実性の低い政策で、本気で言っていたとは思えない内容の政策ばかりです。


石破さんは、おさらくこれまでは一般受けの良い政策論を全体の整合性など考えずにランダムに吹聴して人気取りをしていただけで、現実的な政策など考えていなかったのだろうと思っています。
右も左も積極財政も緊縮財政も無い「空っぽ」の政権なのだと思います。

経済政策もあまり変わらない

財政出動と増税に関しては、現状では石破政権の財政政策がはっきりしませんが、今はまだ岸田政権時代の経済対策が終わったばかりで、その効果がGDP統計など経済指標に現れるまで、半年ぐらいの時間がかかります。
今のマクロ経済状況で財政出動が必要なのか、必要ならどのぐらいの財政出動が妥当なのか、現状では分かりません。
つまり、今の日本経済は、石破政権の財政税制政策も不明瞭なら、日本経済の状況も不明瞭なので、しばらく様子を見るしかない状況と言えると思います。

適切な財政政策の規模が明らかになるのは、2025年度初頭(4月以降)のことになると思います。

石破政権は、経済政策のアベノミクスも、金融政策は植田日銀任せになるので、何もしなくてもデフレ脱却は可能だと思っています。 (以前から言っていますが、私は植田日銀を支持しています)

日銀の広報を読む限り、日本経済はゆっくりと回復成長路線に入っており、特に何もしなくてもゆっくりとデフレ脱却できそうな状況に見えます。

野党について

立憲民主

経済政策に『日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更するとともに、政府・日銀の共同目標として、「実質賃金の上昇」を掲げます』というのがあります。

この政策は、これだけで致命的にダメな政策です。

インフレ目標が2%になっている理由は様々ありますが、 基本的な理由として「フィリップス曲線に従い完全雇用を実現出来るインフレ率が2%以上だから」というのがあります。

アベノミクスはインフレ目標が2%を目指して総需要と雇用を拡大する政策なので、インフレ目標が0%では、デフレ不況に逆戻りしてしまいます。

物価上昇率が年率2%ということは、貨幣価値から見ると年率2%で貨幣価値が下がり続ける事と同じことを意味します。

貨幣価値が下がる経済では、人々は貯蓄を切り崩し、消費や投資に回します。
消費が増えれば需要が増えますし、投資が増えれば株価が上がり雇用を生み出す企業へ資金が集まります。
また、貨幣価値が下がると債務の価値も下がるので、融資が受けやすくなり、企業は銀行融資を積極的に受け事業を拡大し雇用も増え、消費者は自動車ローンや住宅ローンなど積極的に利用して大型耐久財の消費が増えます。
日本中の債務価値の相対的縮小が起きますから政府債務もGDP比率では減ります。

立憲民主はこの「インフレ目標0%」政策で、マクロ経済を全く理解していないことが分かります。

政権を担う資格は無いと思います。

他にも「フェアな分配・再分配」の部分に記載されている法人税や各種累進課税についても、現状ではマクロ経済にデフレ圧力を生み出すものが少なくないです。

立憲民主党の経済政策

維新

維新の政策に、金融政策の記述は無いです。 これは植田日銀の方針を尊重するということでしょうか。

マクロな財政政策を見ると
『「フローからストックへ」を基軸とした税体系全体における抜本的な改革を目指します』
『経済活性化施策として消費税を8%とし、軽減税率制度を廃止します』
という政策だけが存在し、他はミクロなゼロサム論になります。

「フローからストックへ」という言葉は、所得税・法人税・消費税などのフロー課税を減税し、固定資産税・金融資産課税・相続税・贈与税といったストック課税を増税する事を意味する言葉です。

政策には消費税を8%へ減税することしか書かれていませんが、ストック増税はどこで行うのでしょうか。
ここを政策に記載していないのは、あまり誠実な態度では無いと思います。

私は税制改革で「フロー減税ストック課税」という方向性は正しいと思います。
しかし、政策内容を見る限り積極財政により総需要拡大を目指すようには見えません。
財源論が多いようですが、経済全体を拡大して財源も拡大するという発想に乏しい気がします。

社会保障政策については、現役世代の負担を軽減し年金世代の負担を増やす政策が記述されています。 それ自体は否定しませんが、
『医療制度の適正化による現役世代の社会保険料負担軽減を実現する他、年金制度にも抜本的な改革を実行。
世代間格差の生まれない積立方式または最低所得保障制度を導入する等、制度の見直しを進めます』
という記述に多少の疑問を感じます。

年金制度に積立方式は導入できないと思います。
積み立てではインフレにより貯蓄貨幣の価値が年率2%で失われていくので、積み立て資金は価値を失い、全員「最低所得保障制度」を利用することになってしまいます。
年金世帯の所得をあまり減らしすぎてしまうと、年金世帯の消費減少の分だけ総需要(GDP)も減ります。
総需要が減ると現役世代の雇用も減ります。
社会保障改革をする場合は、総需要を減らさずに財政改革を進める必要があります。
社会保障財政改革の結果、デフレに転落してしまうようでは本末転倒です。

現在の年金財政は、その一部だけを株式投資に回しています。
もし、積み立て全てを、GPIFなど株式投資に回すとなると、パンデミックや戦争など一時的な経済危機で株価暴落したとき、年金の財源が一時消失して年金支給も停止してしまいかねません。

正直なところ、現実的な制度案とは思えないです。
個人的には高齢者の健康保険窓口負担を、現在の原則1割から、原則2割負担へ、一部富裕層は3割負担にするなどの、年金世代の負担を少し増やす事は必要だと思っていますが、維新の社会保証制度案には制度設計の不完全さを感じます。

維新はアベノミクスに肯定的ですが、政策内容にゼロサム論的な財政の張り替え論が多く、デフレ脱却のタイミングでその政策を実施する事に疑問を感じるものが少なくないです。
マクロにGDPを増加して税収を増加していく政策がどうも見当たらないように思えます。
「どこかを削って、別のどこかを増やす」政策ばかりに見えて、個人的にはイマイチ積極支持する気になれません。

政策提言 維新八策2024

国民民主

「手取りを増やす」という言葉はインパクトが大きいですね。
国民民主党の玉木さんは以前から、金融緩和の推奨や積極的財政出動に前向きで、アベノミクスに肯定的な政治家です。
国民民主の政策も『減税、社会保険料の軽減、生活費引き下げで消費を拡大』これは以前からの国民民書の説明と照合すると、積極財政政策による総需要拡大政策でしょう。
だから減税だけしか書かれていないのでしょう。

玉木雄一郎さんも以前から「ブラケットクリープ減少対策としての控除枠と累進課税枠の拡大」を訴えています。

内閣府の試算でも2026年には財政黒字になる事が予想されています。
以前の発言内容から、この黒字分を減税に充てるものと解釈できます。

「給料・年金が上がる経済」を目指すということなので、マクロな需要拡大が目標なのでしょう。

マクロ経済政策としてはマトモな政策だと思います。

ただ、小さな政党で、政策自体が少ないので、期待できる事は限られてきます。

国民民主党の政策

公明

「低所得世帯や年金生活者への給付」
「電気・ガス料金、ガソリン等燃料費への支援」
「重点支援地方交付金」

といった政策を見て分かると思いますが、基本的な経済政策は岸田政権の経済政策と同じです。
年金生活者支援があるので、現役世代重視で年金世代の負担増加を掲げる維新とは、ちょうど「逆」の立場の政党でしょう。
正直、これでは現役世代の支持を集めるのは難しいと思います。
高齢者世代の支持は集めそうな気もします。
岸田政権と同じなのでマクロ経済政策としては正しいと思います。

ただ、私は公明党の経済認識には疑問を持っています。
以前、岸田政権が防衛増税(法人税増税)を主張して、安部派や高市大臣と衝突したとき、公明党は増税に賛成しました。
現在では、内閣府が将来財政均衡する事を予測しており、防衛増税の必然性はない事が明らかです。
私は、公明党の経済理解をあまり信用しておりません。

その他

共産党については、論外と考えています。 民主主義・資本主義の国で、共産党が存在していること自体が問題だと思います。 投票する事は絶対に無いと思います。

それ以外については、その政党に荒っぽい支持者が付いていて、批判すると猛烈なバッシングを受ける可能性のある政党があるため、話題にしません。

話題にすると危険なので。

政策内容も支持出来るような物ではないので、無視します。

終わりに

正直、石破政権は、積極的に支持できる政権では無いです。
しかし、他に支持できる政党があるかと聞かれると、右派と経済重視にとっては国民民主と維新ぐらいしか無いのが現実でしょう。(高齢者なら公明党)
今回の衆議院選挙も、自民党は大きく議席を減らすと思います。
SNSを眺めていても、右派と経済重視の人々は、石破政権への反発から「自民党には投票しない」と言っている人が少なくないです。

 

私の選挙区は、自民と立憲と共産しか候補者がいません。
その自民党候補は以前から高市支持を表明していた人なので、高市支持の私としては、その自民党・高市支持の候補者に投票するのが最適解と考えます。

国民民主や維新の政治家がいたら、そちらに投票した可能性も無くはないのですが、候補者がいない以上は、その選択肢は無いです。

個人的には「白票」は立憲議員を勝たせてしまい兼ねないため「悪手」だと考えます。

他の国民民主や維新の候補者の存在する選挙区の場合は、個々人の好きにしたら良いと思いますが、「白票」は避けた方が良いと思います。

今回の選挙は、支持政党を積極的に選ぶのではなく、「最悪を避ける」ことを目指すべきだと考えます。

地元の選挙区の候補者を個人単位で選択するのが良いでしょう。
政党支持ができるのは、国民民主と維新(現役世代のみ)と公明党(高齢者のみ)ということになります。 自民党は、石破さんが何を考えているのか、良く分からないので、自民党もどうしたいのか良く分かりません。
自民党候補者は個人を個別に選択するしか無いでしょう。

 

以上、今回の総裁選と衆議院選挙についての個人的な雑感でした。

 

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