減税で揉める与党 – 緊縮財政派と積極財政派の綱引き

時事

減税で揉める自民党


私は以前6月に書いた以下のの記事で「自民党内部では、積極財政派と財政再建派の対立が、政治的に均衡している状態なのだと推測できます」と書きました。


「岸田政権が両者の中立的位置に存在している」とも書きました。


自民党内部の積極財政派と財政再建派の対立


 


今、補正予算を巡る議論で、与党の中で減税するのかしないのか、財政出動の方針を巡って、積極財政派と財政再建派の綱引きが行われているのが、よく分かります。


 


 


9月26日の報道では、


岸田総理が「成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」と明言したとあります。


 


税収増の成果を国民に還元 – 岸田総理が経済対策の方向性示す


 


10月6日の報道では、


鈴木財務大臣が岸田総理に対抗するかのように、「消費税は全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置付けられておりまして、その税率を引き下げるということは、極めて慎重な検討が必要だ」と、減税に否定的なコメントを発表しています。


 


鈴木財務大臣 自民党内の減税論に「極めて慎重な検討が必要である」


 


10月17日の報道では、


自民党からの政策制限で「減税」が期待されたにもかかわらず、党内から求める声が出ていた所得税の減税は盛り込まれませんでした。


自民党内部で、減税を求める勢力と、減税を否定する勢力が、衝突した事が予想できます。


おそらく、減税について議論しても平行線を辿るため、政策提言には盛り込まれなかったのでしょう。


 


自民 経済対策 低所得世帯支援など提言 所得税減税盛り込まず


 


そして、10月18日政策提言を受けた岸田総理は、


「経済対策をめぐり、減税も念頭に、税収の増加分の一部を国民に還元することを強調し、近く与党の税制調査会に具体策の検討を指示する」とあります。


 


岸田首相 “税収増加分の一部を国民に還元” 所信表明で強調へ


 


要約


以上の流れを要約しますと、


 


岸田総理「増えた税収を国民に還元するぞ」


財務大臣「消費税は社会保障財源だから減税したくないぞ」


自民党積極財政派「それじゃあ、所得税減税しようぜい」


自民党緊縮財政派「いやだ、減税反対じゃ」


自民党内バトル平行線 !


自民党政策提言「減税は断念して緊急対策を優先したわ」


岸田総理「減税も念頭に、税収の増加分の一部を国民に還元するぞ」 ← 今ここ


 


と見る事ができます。


 


予測


これまでの流れを見る限り、岸田総理の減税を含む財政出動の意思は固そうです。


 


現在の日本経済の状況は、GDPギャップがプラス転換しており、上昇基調にあります。


必要なGDPギャップはプラス3%から4%ぐらいになりますので、まだ不十分ですが、政府の補正予算による15兆円以上の財政出動があれば、適正なGDPギャップに引き上げる事ができます。


岸田総理の発言を聞く限り、総理には財政出動によりGDPギャップを適正水準まで引き上げる意思があり、その意思もかなり「固い」と予想できます。


 


マクロな財政出動は、総額で15兆円以上あれば良く、その内容は必ずしも「減税」でなくとも良いと思います。


補助金でも減税でもどちらでも良いです。


ただ、以前「23年度24年度の税収を単純計算で予測してみました」の記事で解説したように、このまま税収が増加しますと、2年か3年の内に財政黒字になる事が予想され、現在の税率は高すぎる可能性があります。


もし、長期的財政均衡を前提にした適正な税率を目指すのなら、少し税率を下げた方が良いかも知れません。


 


現在の税収増加の速度から考えれば、総理が減税を検討するのは、当然かも知れません。


 


財務省や緊縮財政派が、財界人などを利用して、やたらに増税の必要性を説いたり、減税に反対したりするのは、積極財政派の勢力が強く緊縮財政派の力が弱まっているからだとも、推測できます。


 


財界人や財務大臣が、やたらに社会保障財源を理由にした消費税増税を説いていますが、総理や官邸には完全に「無視」されています。


 


これまでの報道を見る限り、増税は不可能でしょう。


また、岸田総理はなにがしかの減税をすると思います。


 


私個人は、減税でも補助金でも、どちらでも良く、重要なのは財政出動の総額です。


 


岸田総理は財政出動に積極的なのは分かりましたので、このまま頑張っていただきたいと思います。


私は、陰ながら岸田政権を応援します。

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