全銀システム障害の概要
先日の10月10日に銀行間で振り込み手続きを担う全銀システムに障害が発生し、11の金融機関で振り込みが実施できなくなるシステム障害が発生しました。
全銀システムは、各銀行のシステムと全銀システムとをRC(中継システム)によって繋いでおり、このRCの機器を旧機器から新機器へ更新が原因で、障害が発生したようです。
RCの事は「全銀ネット」とも呼ばれます。
イメージとしては、中心に全銀システムが存在し、各銀行のシステムを、全銀ネットでスター型ネットワークにより繋いでいるシステム構成となります。
全銀ネットの不具合は振込手数料の計算に不具合があったようで、全銀ネットで接続している14銀行の内、手数料計算を銀行側システムで実施している3銀行は影響を受けなかったようです。
11銀行は全銀システムの手数料計算を利用しており、全銀ネットの不具合で振り込みができなくなったようです。
全銀システム障害の原因判明、メモリー不足でインデックステーブルが不正確な状態に
不具合の原因は、報道ではメモリー不足ということですが、大雑把すぎて詳細は分かりません。ただ、RCのアップデートの失敗である事は明らかであるようです。
今回のシステム障害は、社会的影響が大きく、金融機関が顧客の損失を補償するようです。
全銀システム障害、個人・企業の損失を「各銀行が補償へ」…二重振り込みの手数料など想定
重要な社会インフラもメンテは必要
鉄道や公共通信回線などと同じように、全銀システムは重要な社会インフラの一つですので、突然停止してしまいますと、社会に甚大な被害をもたらしてしまいます。
予測できないシステムダウンは何としても避けなければなりません。
しかし、どんなに必須のシステムであろうと人が作るシステムは必ず、長期的には劣化して壊れて行きます。定期的にメンテナンスして、古い部品や機器は新しいものに交換して行かなければなりません。
全銀システムなども古いコンピュータなどは定期的に新しい機器に交換する必要があります。
全銀システムの場合は、2018年から24時間稼働するように運用変更したように、時代のニーズに合わせて改修が必要にもなります。
止まってはいけない必須のシステムであろうと、メンテナンスは絶対に必要なのです。
私は、鉄道も通信回線も銀行の情報システムも、全てのシステムにおいて、完全に停止しないで運用し続ける事は不可能だと思っています。
定期的に停止してメンテすべき
今回の全銀システムや、以前停止した、auやドコモなどの通信回線など、社会的に必須のインフラシステムは、突然停止すると社会に大きな損害を与えます。可能な限り予告なく停止する事態は避ける必要があります。
しかし、古い機器の更新や、機能の拡張や運用方針の変更など、どうしても大がかりなメンテナンスは発生します。
そのメンテナンスを全てシステムを停止することなく実施することには、かなり無理があると思います。
私は、今回の全銀システムの機器更新メンテナンスは、3ヶ月ほど前から予告して、システムを一週間程度停止して、実施すべきだったと思います。
年末年始など銀行システムは停止します。
一般国民も年末年始は銀行が止まることは当たり前の常識として受け入れています。
これと同じように、一週間ぐらい銀行システムが停止する期間を決めておけば良いと思います。
時期としては、年末年始とゴールデンウィークと10月上旬の年三回が良いと思います。
インフラシステム管理者は、毎年三回のインフラ停止の期間にシステム更新を実施して、しっかりとテストして問題を解決してから、新規更新システムを再開するのです。
このように一度システムを停止してメンテナンスすれば、予期しないシステム障害は回避し易いでしょう。
ユーザー側でも、事前にシステムが停止する事が分かっていれば、対処する事は可能です。
全銀システムの場合、5月上旬と10月上旬の一週間は、銀行振込ができなくなる事を、一般の人々が予め知っていれば、事前に必要なお金を用意しておく、先に振り込んでおくなどの対処は十分可能です。
実際年末年始はそのように対処しているのですから。
私は、鉄道でも携帯電話回線でも、定期的に停止してメンテナンスする期間を設けた方が良いと思っています。
既に人手不足経済に突入しており、デフレ時代のように現場の労働者に無理なスケジュールを強いる事は難しい時代に入りつつあります。
日本経済にとっては、人手不足の方が、賃金上昇圧力を生み、設備投資も進みますので、消費拡大によるGDP引き上げと国力の増強に貢献します。
だからこそ、デフレ時代のようにあまり、サービスの供給側に無駄に負担を強いる事は、通用しなくなります。
サービスの受け手も人手不足経済へ適応する必要があり、その一つとして、社会的に必須のインフラサービスが完全無停止で24時間稼働する事を、期待しない事が求められると考えています。
鉄道や銀行は年に三回ぐらい一週間、定期的に停止する。
携帯電話回線は、時々停止する事を想定して、ユーザー側で予備回線を用意しておく。
バスやタクシーなどは、時々使用できない事を仕事や生活に想定して、一時的リモートワークや緊急時のサービス停止や遅延を、予め計画してユーザーの承認を受けておく。
物流は、遅延を最初から想定しておく。
こういった、インフラ運用の常識の全社会的見直しが必要な時期を迎えていると、私は思います。
今回の全銀システム障害は、メンテナンス計画に無理があったと思います。
機器の更新は、一度全銀システムを計画的に停止して、行うべきだったと思います。
無理な計画を立てても、できないものはできないのです。できる計画を立てるべきでしょう。
これは日本中のインフラ・システムに当てはまることだと思います。
人の余っていたデフレ経済は終わったのです。
考え方を改めましょう。