6月28日ごろの報道で、2022年度の税収が71兆円を超える見込みだそうです。
昨年度の税収71兆円台、3年連続で最高更新し初の70兆円超…「法人税収」伸びます
会計年度の税収なので2022年4月から2023年3月までの期間になりますから、全ての税収の集計には時間が掛かります。
税収の確定値は7月上旬に財務省から公式発表されるようです。
現在報道されている税収は、現在集計の済んだ段階で71兆円を超える見込みということで、もう少し増える可能性もあります。
財務省の見積もりが68.3兆円ですから、今年も税収が見積もりより3兆円ほど上振れることになります。
財務省の税収見積もりはここ三年ほど数兆円上振れており、見積もりの信頼性が疑問視されています。
令和2年の税収見積もりは55.1兆円でしたが、最終税収は60.8兆円で、5.7兆円の上振れ。
令和3年の税収見積もりは63.8兆円でしたが、最終税収は67.0兆円で、3.2兆円の上振れ。
令和4年の税収見積もりは68.3兆円でしたが、最終税収は71兆円超で、2.7兆円超の上振れという具合です。
財務省の税収見積もりが上振れるのは、税収弾性値という係数の値がアベノミクス景気回復期の実状を充分に反映していない値を使用しているからと思われます。
税収弾性値とは、GDPが1%成長する事に税収が何%伸びるかを示す係数です。
財務省は税収弾性値を1.1と定めていますが、アベノミクス期間中の税収弾性値は、パンデミックや消費税増税などの影響を排除して平均値を取りますと、4前後になります。
この件に関しては、以前の記事に詳しく書いて解説しております。
この記事の中の「一般会計税収(決定額)」の蘭の税収額は、2022年度以外は、最終税収の金額を掲載しています。
しかし、2022年度はまだ最終税収の金額が集計されていませんでしたので、見積額を経済しています。
だから、この2022年度税収額は、68.3兆円から71兆円超に修正しなければなりません。
また、後の方で掲載している「将来の税収予測」も2022年度税収額68.3兆円を基準に計算していますので、全て3兆円ほど加算しなければなりません。
記事を書いたのが5月24日ですので、これはしかたがありません。
最新の税収確定値が財務省から公表されたら、「将来の税収予測」の部分だけ、新記事として書きたいと思います。
将来の税収に関しては、元日銀審議委員を務められた片岡剛士さんが、以下のレポートで、2023年度は77兆円程度の税収もありえると予測しています。
Weekly Macro Economic Insights 2023年6月26日~6月30日週版
政府の経済見通しは、名目GDP成長率+2.1%だそうで、これを基準に税収を推計しますと、77.6兆円になるそうです。
黒田日銀の日銀審議委員を務めた専門家の推計ですから、こちらの方が信頼できるでしょう。
私は、先の「GDP成長率と税収成長率の基礎知識」で、国債償還費16兆円の一般会計歳出を廃止すれば、税外収入もありますので、税収は94兆円あれば財政均衡すると説明しました。
もし、2023年度税収が77.6兆円にも達するならば、2025年度から2027年度の期間に94兆円の税収を達成する可能性はかなり高いと思われます。
単純に年間6兆円ずつ税収が増えますと、2024年度は83.6兆円、2025年度は89.6兆円、2026年度は95.6兆円となり2026年度の税収で財政均衡する計算になります。
2027年度は101.6兆円になるので財政黒字となります。
インフレ目標がいつ達成出来るのか、日銀の植田総裁も現状では分からないと説明していますので、数年先の事は明確には分かりません。
しかし、これまでの税収の傾向を見る限り、このままGDP成長を続けていけば税収増加で財政均衡する可能性は年々高まっていると言えるでしょう。
税収正式発表:2023年7月4日追記
財務省から税収の正式発表がありました。税収は71兆1374億円です。最新の税収見積もりは68兆3590億円だったので、2兆7784億円の上振れになります。
先に紹介した「GDP成長率と税収成長率の基礎知識」の記事では、「将来の税収予測」を2022年度税収を68兆3590億円として単純計算して算出していました。この数値を71兆1374億円に変更したものを、以下に掲載したいと思います。
税収弾性値は4.4 、名目GDP成長率は2.1%として計算しています。
年度西暦 | 一般会計税収 (決定額) (10億円単位) | 名目GDP (年度) (10億円単位) |
---|---|---|
2022 | 71,137.40 | 561,196.70 |
2023 | 77,710.50 | 572,981.80 |
2024 | 84,890.90 | 585,014.40 |
2025 | 92,734.90 | 597,299.80 |
2026 | 101,303.60 | 609,843.00 |
2027 | 110,664.00 | 622,649.80 |
2028 | 120,889.40 | 635,725.40 |
2029 | 132,059.60 | 649,075.60 |
2030 | 144,261.90 | 662,706.20 |
2023年度税収は片岡剛士さんの計算に近い値になっています。
税収弾性値の値は、景気拡大期には大きくなりますが、景気安定期には1程度になりますから、この計算は景気拡大期が2030年度まで継続する想定で計算しています。言い換えれば現在の量的緩和が2030年まで続くという想定になります。
現実には、途中でインフレ目標を達成して、量的緩和は終了します。だからこの計算の想定は、量的緩和が終了するまでしか成立しません。
この計算だと、インフレ目標達成が2026年になったとしたら、2026年度の時点で税収は101兆円に達するため、財政均衡することになります。
このペースで税収が増加すれば、増税する必要が無いことが、理解できると思います。
増税などすれば、GDP成長率は低下し、税収の伸びも低下してしまいます。
岸田総理には、このことを良く理解して、GDP成長率を前提とした財政政策を検討して頂きたいと思います。