政治的情報発信は匿名で行うべき

私は普通の一般人で、政治家や知識階級やジャーナリストのような政治的に特別な権力や権威を持つ人間ではありません。

 

以前から情報発信は実名で行うべきか匿名(仮名)で行うべきか迷っていました。

政治家や報道機関のジャーナリストなど権力者・権威者なら、言論活動それ自体が仕事ですから、自分の言論によって反対派から反発を買っても、それが仕事上初めから避けられないものですし、初めから政治的対立は職業上織り込み済みのはずです。

 

しかし、一般のサラリーマンやフリーランスや零細企業の経営者などは、政治的言論による世間の反発を受けると仕事や商売に差し支えるのが普通です。

実際、私も実名での政治的情報発信をしていましたが、プライベートへの直接攻撃が怖く、なかなか率直に言いたいことは言えないものです。

 

公の情報発信の実状

政治的に右翼でも左翼でも、先鋭的で攻撃的な人々は多く、自分の気に入らない言論の主には、公の場での公正な議論ではなく、職場や自宅など言論主のプライベートな場所や働く場へ直接抗議の電話を入れたり、抗議の張り紙をしたり、昔の街宣車右翼のように職場の前で大音量で抗議のアナウンスをしたりします。

 

ここまで極端でなくても、一般人の職場や自宅などに政治的反対派が多数の電話抗議を入れてくるのは、珍しい事ではありません。

 

こういう行為を「電凸」と言うそうです。

 

はっきり言ってこの行為は、一般人にとっては言論の自由の侵害に他ならないです。

 

年金生活者などを除けば、職業の無い人というのはほとんど居ません。

大半の人は自分の職業を持ち、職場があります。

職場はその人の生きる糧です。

 

そして民主主義国家の国民は年齢制限などを除き、原則として全員が選挙権と被選挙権を持ち、言論と表現の自由を持ちます。

これが脅かされると民主主義体制が脅かされます。

 

昔は、政治的意見の情報発信が可能だったのは、一部の権力者と報道機関の人間と、作家など出版を生業とする一部の人だけでした。

 

しかし、現代ではSNSやブログなどで、誰でも政治的意見を公に発信できるようになりました。

誰でも情報発信ができるようになったと言っても、自分の言論自由の権利は「自己防衛」に頼らなければなりません。

この自己防衛のリスクとコストは現段階ではバカにできません。

最悪、いつ電凸で失業するか、殺されるか分からないのが現実です。

 

しかし、ネット時代の政治的言論活動は国民総参加が望ましいのは自明だと思います。

よって、一般人の政治的言論は、実名や職業を隠し「匿名」で行うのが合理的です。

 

私の「雪見文人」という名前も仮名であり実名ではありません。

 

「政治的言論には責任が伴い、その責任を担うため実名で行うべき」という意見は正しいと思います。

しかし、政治的言論には必ず強く反発する不特定多数の群衆が存在し、その群衆は必ずしも法律を守る理性的な人々だけで構成されているわけではありません。

特別な身分の者でない限り、その群衆の少なくない一部による多重攻撃から身を守るのは、困難になります。

 

人間には黙秘権や正当防衛などに代表されるように、自衛権があります。

明らかに攻撃を受けるリスクがあるのなら、自衛の為に最善を尽くすべきですし、法的にも認められているはずです。

 

政治的言論の自由と、社会的・生物学的な自衛権を、一般人が同時に満たすには「匿名で政治的情報発信をする」のが、最も安全でコストの掛からない選択肢です。

 

よく「政治的言論活動するなら実名でやれ」とか匿名をバカにしている人達がいますが、その本来の意図は分かりませんが、この批判は実質的に一般人の言論の自由を封じる反民主主義的な批判だと思います。

 

私は肯定できませんね。

50年後はわかりませんが、現段階では民主主義の敵ですね。

 

将来的に安価な手段で、裁判などで、一般人が簡単に言論の自由を守る事ができるようになれば、実名発信を推奨するのも良いでしょう。

現段階ではそのようになっていません。

 

職場には言論の自由は無い

SNSやブログによる公の情報発信は、上に述べた通りですが、サラリーマンなど職場を持つ人々は、昔から職場での言論の自由は実質的に存在しません。

社長や上司の批判に繋がる意見はなかなか言えないものです。

自分が所属する業界の批判も言えません。

これらを言ったら会社を追い出されてしまいます。

 

しかし、どこの業界も様々な問題を抱えており、正論ならば業界や会社の批判的意見は、社会的には有益な情報になる事も少なくないです。

それが誹謗中傷や嘘などでなく、事実に基づく正論ならば、それが業界や会社の批判に繋がる意見であっても、公に主張すべきです。

 

しかし、実名では業界や会社の批判的意見など言えるものではありません。

 

この場合でも、匿名でなら言えます。

 

職業人はもっと匿名で業界の問題点を公に発信すべき、だとすら思います。

 

デマや誹謗中傷を肯定するわけでは無い

この意見は匿名でのデマの拡散や、誹謗中傷を肯定するものではありません。

デマや誹謗中傷を抑止する為に実名での発信を求めるというのは、あまりにも大雑把な対策と言わざる得ません。言論の自由を犠牲にしてまでやるというなら、もう少し良い方法を考えたらどうでしょうか。

デマを拡散するマスメディアに自粛を求めるとか、誹謗中傷ならアカウントを停止するとか、他にやりようがあるはずです。

 

民主主義と個人の安全の為にも、匿名発信は必要です。

 

実名を求めるなら責任を求める

 

私は数日前まで実名で政治的な意見をSNSなどで発信していました。

 

しかし、上記の理由により、実名ではなかなか仕事への影響が気になって言いたいことは言えないものです。

政治的なものでも、業界や会社に対する批判でも、批判的な意見は匿名で行うべきです。

 

そしてもし、貴方が実名での情報発信を他人に求めるのなら、その人が万が一テロの被害を受けたり、優越的地位の濫用や、電凸やデモなどで失業した場合は、損害賠償をするべきです。

 

それが「他人に実名発信を求める」行為の責任というものでしょう。

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