GDP統計23年7-9月期二次速報の報道について思うところ

時事

GDP二次速報の内訳

以前に23年7-9月期GDP一次速報について書いた以下の記事で、「減少の主な要因は、民間在庫変動と民間企業設備投資になります」と書きました。

GDP統計7月~9月期の一次速報の報道について思うところ

今回の二次速報の内容を見ると、民間企業設備投資の前期比減少率が、-0.6から -0.4 になり、減少幅が減少しました。

つまり、一次速報ほど減少していないわけです。

代わりに民間在庫変動の寄与度が、-0.3 から -0.5 になり、減少幅が拡大しました。

つまり一次速報より大きく減少しました。

他に二次速報で、減少幅を拡大したものは、民間消費と民間住宅、そして公的資本形成です。

民間消費も-0.1から-0.2に減少幅を拡大しています。

寄与度を見ると、

民間最終消費支出が、-0.1

民間企業設備投資が、-0.1

民間在庫変動が、-0.5

という具合に、圧倒的に在庫減少の影響(寄与度)が大きいです。

設備投資の減少幅もそれほど大きくなく、

消費の減少幅はほとんど影響していないぐらい小さいです。

一方で増加しているのは、輸出の+0.4%と、輸入の+0.8%です。

輸出はGDPに加算されますから寄与度は+0.1です。

輸入はGDPから減算するので寄与度はマイナスになり-0.2になっています。

輸入の増加は資源高と円安によるもので、10月の時点で海外資源価格は落ち着いており、為替の円安も米国のインフレの落ち着きと共に、収束しつつあります。

在庫が減少した原因は、上でリンクしている以前の記事で説明したように、「販売量が増えているのに、生産量を増やしていないため、在庫を販売に回して減少している」ことになります。

円安で輸出が旺盛なわりには、企業が生産量を増加していないために、在庫が減少し、その分だけGDPが減少したということです。

また、民間企業設備投資の僅かな減少は人手不足による供給制約のようです。

消費の僅かな減少は資源価格高騰と食料価格高騰が原因でしょう。

このペースで在庫が減少していくのなら、普通の企業なら在庫が尽きる前に生産能力を増強するでしょう。

人手不足は労働者の賃金上昇圧力を生みます。

海外の進言価格高騰は既に収束しており、天候不順による食料インフレは長続きする性質のものではありません。

以前も私は「GDP一次速報は報道されるほど悲観的内容ではない」言いましたが、二次速報を見ても同じ感想です。

「財貨・サービスの輸出」は、0.4% 増加しています。寄与度は + 0.1 です。

在庫減少の理由は、輸出増加を中心とした販売の増加によるもので、経済の縮小を意味するわけではありません。

生産能力を増強するには、労働者を増やすか設備投資する必要があります。どちらも早急にできるものではないです。

在庫が無くなる前に、企業は生産量を増やすはずですので、在庫減少によるGDP減少は悲観的な変化ではないと思います。将来の雇用増加に結びつく因子です。

消費減少の原因も、資源と食料の価格高騰なのは明白です。

資源価格は既に落ち着いており、食料インフレも次の農作物が出荷されたら落ち着きます。

消費の減少は規模も小さく短期的な物で、近い内に解消されると思います。

報道の問題点

大手メディアの報道を見てみます。

NHK – 7-9月のGDP改定値 伸び率 年率換算でマイナス2.9%に下方修正

読売新聞 – GDP年2・9%減に下方修正、物価高や猛暑の影響で個人消費弱く

朝日新聞 – 7~9月期の実質GDP、年率2.9%減に下方修正 個人消費弱く

時事通信 – GDP、年2.9%減に下方修正=4期ぶりマイナス、消費下振れ―7~9月期改定値

日経新聞 – GDP、年率2.9%減に下方修正 7?9月改定値

大手メディアの報道は、全体的に悲観的に報道しているものばかりです。

先に説明したように、GDP減少の大きな原因は在庫の減少で寄与度は-0.5です。

消費の減少は大きなものではなく寄与度は-0.1しかありません。

設備投資の寄与度も-0.1足らずです。

もう一つ悪質なのが、輸出は+0.4%で増加しているにもかかわらず、一次速報の+0.5%から下がった事を「輸出が減少した」かのように報道している点です。

輸出は一次速報から増加率が減っただけで、+0.4%増加しています。

そして最も悪質なのが、寄与度が最大の民間在庫変動の減少がほとんど取り上げられていない点です。

逆に、一次速報から減少幅が減少した民間企業設備投資は「減少した」とだけ報道しています。

輸出の増加と在庫の減少は、明らに経済全体としては良い変化であるにも関わらず、寄与度の小さい消費の僅かな減少を拡大解釈して、悪い部分を大げさに書き、良い部分は触れないか小さく扱い、ほとんど無視するという、悪質な報道が目立ちます。

この場合、年率換算2.9%にどんな意味があるのかも、理解できません。0.7%減少を大きく見せたいだけではないでしょうか。

次の四半期にはまた数値が変動するのに、年率換算してどうするのでしょうか。

大手メディアの報道を見る限り、私には、意図的に経済状況が悪く見えるように、切り取り偏向報道しているようにしか見えません。

以前から、私はマクロ経済報道に関しては、大手メディアの報道は信用できないと思っています。

今回もそれを証明した印象です。

マクロ経済状況を知りたいのであれば、政府の公報や経済指標を直接確認するべきでしょう。

報道機関が全部悪いとは言いませんが、報道内容をバカ正直に信じてはいけないと思います。

検索するだけで確認できるものは、確認しましょう。

以上、GDP速報について、言いたいことを言わせて頂きました。

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