先日、総務省から9月の消費者物価指数が公表されました。
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)9月分(2023年10月20日公表)
(1) 総合指数は2020年を100として106.2
前年同月比は3.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は105.7
前年同月比は2.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.4
前年同月比は4.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇
消費者物価指数には、前年同月比と前月比の二つの値があります。
前年同月比は、2022年9月と比較した物価上昇率であり、
前月比は2023年8月と比較した物価上昇率です。
前月比は一ヶ月分の物価上昇率ですが、
前年同月比は一年分の物価上昇率です。
「一ヶ月分の物価上昇率」と12の積を取ると、年率換算のインフレ率になります。
総合指数(CPI)は、前月比0.3%ですから、年率換算で3.6%になります。
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は、前月比0.2%ですから、年率換算で2.4%となります。
前年同月比CPIは、過去12ヶ月分の前月比CPIを合計した値でもあります。
前年同月比CPIは、過去12ヶ月分の前月比CPIを年率換算した値の平均値と見なす事もできます。
前月比でのCPIは3.6%で高いですが、コアコアCPIは2.4%で、適正インフレ率です。
試しに、2022年1月から2023年9月までのCPIとコアコアCPIの推移をグラフで比較してみましょう。
まず、総合指数(CPI)からです。前月比は年率換算です。
前年同月比CPI(青い線)は昨年10月から3.0%付近で高止まりしています。
前月比(オレンジ色の線)は変動が激しいですが、長期的には変わっていません。
次は、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)です。前月比は年率換算です。
日銀の金融政策や政府のマクロ経済政策において重要なのは、こちらのコアコアCPIの値です。
前年同月比コアコアCPI(青い線)は昨年4月から累積的に上昇しています。
しかし、前月比コアコアCPI(オレンジ色の線)は今年5月から下落傾向を示しています。
最新の9月の前月比コアコアCPIは2.4%で適度なインフレ率になっています。
前年同月比の値は、過去12ヶ月の平均値ですから、短期的変化が現れ難いのです。
短期的変化を見るときは、前月比を見なければなりません。
消費者物価指数の推移を見ますと、CPIは高止まりしていますが、コアコアCPIは今年1月から4月までがピークで、その後は低下している事が見て取れます。
日銀も24年度のインフレ率は2.0%を下回ると予想しています。
前月比コアコアCPIの推移はその予想に即した動きを見せ始めているように見えます。
コアコアCPIが下がっているのに、CPIが高止まりしているのは、生鮮食品とエネルギーの価格が高いからという事になります。
総務省の消費者物価指数の公表資料に、物価上昇への寄与度が記載されています。
以下に引用します。
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)9月分
これを見ると物価上昇に寄与しているのは、食料であることがわかります。
電気代やガス代などエネルギー価格は、むしろ下落しています。
食料価格は、農林水産省から野菜価格動向の資料が公表されています。
最後の23年9月に急激に価格高騰が起こっている事がわかります。
その原因として、以下のように報道されています。
猛暑や雨不足で生育不良、ニンジンやネギなど野菜が高騰…北海道や東北産が目立つ
猛暑で野菜高騰、ブロッコリーやミニトマト「値上げは心苦しい」…静岡おでん提供の居酒屋は「価格変えずに頑張る」
つまり、現在の日本のインフレ状況は、猛暑による不作で野菜など生鮮食品の価格高騰が起こっていて、総合の消費者物価指数は高止まりしていますが、生鮮食品とエネルギーを除く、国内の厳密なインフレ率であるコアコアCPIは下落を始めており、もうすぐインフレ率を引き上げる経済政策が必要になりつつあると言えます。
前年同月比のインフレ率は過去一年間の平均値ですので、過去の影響で高い値が残ります。
しかし、短期のインフレ率である前月比は既に下がり始めていて、日銀の予想に即したインフレ率の下落兆候を見せています。
世間の報道機関は、日銀に対しては「金利を上げろ」と叫び、政府に対しては「財政健全化の為に財政を引締めろ」「消費税を増税して社会保障費を削れ」と繰り返し主張していますが、前月比コアコアCPIを見る限り、金融を引締めて良い状況ではなく、政府は財政出動を拡大する必要がある状況と言えるでしょう。
タイミング悪く猛暑により生鮮食品の価格高騰が起きていて、インフレ率(コアコアCPI)の下落が認識し難くなっているだけです。
インフレ率は下がってきています。
早くもインフレの状況認識を改めなければなりません。
状況の変化が早く、オマケに分かりにくいので、私も混乱してしまいます。
今後、しばらくの間、消費者物価指数は前年同月比ではなく、前月比を見た方が良いでしょう。
なお、この話は私が自分で気がついたわけではなく、経済学者の飯田泰之先生の有料noteに掲載されていたものです。
そのままコピペするわけにも行かないので、自分で政府資料を確認して記事にしたわけです。
原文を読みたい方は、以下のリンクからどうぞ。有料です。