イスラエルのパレスチナ自治区の一つ「ガザ地区」からイスラエル領土内へミサイルの多重攻撃が行われ、領土内に便衣兵が侵入しイスラエルの非戦闘員(民間人)を多数誘拐して連れ去り虐待・虐殺を行いました。
戦闘はガザ地区だけで発生し、ヨルダン川西岸では起きていません。
レバノンと接する北部で次の戦闘の兆候も見られるという噂もあります。
事実上の侵略戦争である戦闘を開始したのは、ハマスという勢力で、パレスチナ自治政府とは別の集団です。ヨルダン川西岸では戦闘が起きていないのがその証拠です。
この蛮行に対する国際社会の態度は、大きく二つに分かれました。
欧米西側諸国は、ハマスに対し激しい抗議を行い、イスラエルに対して支援を表明しています。
パキスタンと対立するインドもハマスに反発しておりイスラエル支持のようです。
ウクライナもいち早くイスラエル支持を表明しています。
事実上、イスラエルが報復攻撃を行う事を推奨する態度です。
一方、イスラム教諸国は程度の差こそあれ、ハマスのイスラエル攻撃を肯定するかのような声明が多数を占め、国民はハマスに声援を送る状況のようです。
NATO加盟国のトルコでさえ、イスラエルに対する反発が強く、暗にハマスの攻撃を推奨するかのような態度です。
日本は、ハマスの攻撃行為を否定し、全ての勢力に対し、戦闘行為の自制を求める声明を発表しました。(イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突について (外務大臣談話))
そして中国も、パレスチナとイスラエルの双方の仲介役を引き受ける声明を発表しました。(ハマスとイスラエルの衝突に中国外務省 双方に冷静な対応を呼びかけ)
日本と中国は、数少ない「中立国」の立場を取っています。
ウクライナ戦争のとき、インドとブラジルは、ウクライナとその支援をしている西側諸国と一線を引き、ロシアと西側諸国の間で中立的態度を取る事を宣言しました。
彼らはロシアに対する経済制裁にも参加しませんでした。
日本はロシアに侵略されるリスクがありますから、ウクライナ支持・反ロシアの外交姿勢を取り、経済制裁にも参加しました。
インドは今回、反イスラムの立場を取り、イスラエル側の支持者になっています。
インドはパキスタンとの領土紛争を繰り返しており、イスラムとは対立関係があります。
インドは国益を考えて外交を選択していますので、なんら責められる筋合いはありません。インドはロシアと対立するメリットがないから中立しただけです。
同様に、日本がロシアに対する経済制裁に参加したのも、日本の国益を考えてのことです。
日本の外交は日本の国益を考えて行うべきです。
日本は中東のイスラム諸国の原油や天然ガスに依存しており、イスラム諸国と対立する事はエネルギー安全保障を脅かします。
また、イスラエルと対立しても西側諸国との関係を悪化させることになるので、安全保障を脅かします。
つまり、イスラエルとイスラム教諸国のどちらを敵に回しても、デメリットしかありません。
よって、日本は両者の間で中立的立場を取るべきです。
日本外務省と岸田総理の声明は、ハマスの不法な攻撃を批判しながらも、戦闘の自制を訴えており、イスラエルとイスラム諸国との間の中立的立場を崩していないので、妥当な声明だと、私は思います。
そして、もう一つ重要なことがあります。
中国も両者に対して中立的な立場の声明を発表していることです。
もし、日本が中立的立場を取らなければ、イスラエルとイスラム諸国との間に対立が生じた場合、中東情勢のイニシアチブを中国に握られてしまいます。
これは中東の石油に依存している日本と西側諸国にとって、致命的に危険な国際情勢を生むことになります。
日本は、なんとしても中国に中東情勢のイニシアチブを渡してはいけません。
その為には、イスラエルとイスラム諸国との間で、中立的立場を取らなければなりません。
安易にイスラエル支持を表明すべきではないと考えます。
ハマスの攻撃は国際法違反の戦争犯罪であり、糾弾されるべきです。
しかし、ハマスの運命は既に決まっています。
イスラエル軍に滅ぼされるでしょう。
懸念事項は、イスラエルと「ハマスの支援者」と推測されるイランとが戦争状態になることです。
安易にイスラエル支持を表明しますと、そのままイスラエルがイランと戦争する事を推奨することになってしまうリスクがあります。
それは避けるべきです。
まだ、戦闘の先行きは、わかりませんが、日本の外交方針について気になった点を書きました。
脊椎反射で、安易にイスラエル支持やパレスチナ叩きの言論や、その逆のイスラエル叩きに走らないように、ご自分でよく考えて判断していただきたいと思います。