日本銀行、金融緩和継続とYCC維持、決定

経済政策

日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合の結果が発表されました。

 

日本銀行 2023年4月28日 当面の金融政策運営について

 

結論から言いますと、これまでと同じ金融緩和政策が継続されることになりました。

 

これまで、植田総裁が説明してきた金融緩和継続の意向が、正式に正式に日本銀行・政策委員会・金融政策決定会合の方針として決定したことになります。

 

一部界隈で心配(報道機関は期待)された金融緩和幅の縮小は、行われないことがハッキリした形になります。

 

具体的には、

 

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は、

短期金利▲0.1%のマイナス金利

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度

長期金利の変動幅を「±0.5%程度」とし、10 年物国債金利について 0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。

 

という方針です。

これまでの黒田総裁路線の継承であります。

 

経済・物価情勢の展望

また、同時に、「経済・物価情勢の展望(2023 年4月)」の発表もありました。

 

日本銀行 経済・物価情勢の展望(2023 年4月)

 

その中に、2022~2025 年度の日本経済大勢の見通しが掲載されていましたので、一部省略して引用させて貰います。

 

2022~2025 年度の政策委員の大勢見通し

――対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。


  年度
 

 実質GDP
 

 消費者物価指数
(除く生鮮食品・エネルギー)

 2022年度

 <+1.2>

 +2.2

 2023年度

 <+1.4>

 <+2.5>

 2024年度

 <+1.2>

 <+1.7>

 2025年度
 

 <+1.0>
 

 <+1.8>
 

 

見通しの要約

今年(2023年)半ばまでは、ペントアップ需要・金融緩和・政府の経済対策の影響で、早いペースの成長が続く見通しだが、

今年後半以降は、ペントアップ需要の伸びは横這いになり、政府の経済対策の効果も弱くなることで、成長の速度は遅くなる見通し。

 

雇用の増加は一貫して継続するが、追加の労働供給が限界に近づき、雇用の増加は減速する。

これは人手不足の深化を意味するので、賃金上昇圧力が強くなり、雇用者所得の上昇と個人消費の増加が見込まれる。

インバウンド消費の増加もこれに重なる。

 

企業収益は、内需の増加と、外需の増加、原材料コスト高の緩和が重なり、改善する見通し。

 

先行きの需給ギャップは、現在は小幅のマイナスだが、今年度半ば頃にはプラスに転じ、プラス幅を緩やかに拡大していく。

 

展望の注目点

 

今後の景気と物価上昇の部分だけを引用させていただきます。

 

今年度半ば頃

今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかに回復していくとみられる。

 

雇用面では、経済活動の改善を背景に、正規・非正規ともに雇用が増加していくとみられる。加えて、労働需給の引き締まりや物価上昇を反映して賃金上昇率も高まることから、雇用者所得は増加を続けると予想される。

 

個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化を主因に、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策や全国旅行支援なども、個人消費を下支えすると考えられる。

 

輸出や生産は、世界的なインフレ圧力や各国中央銀行の利上げの影響などによる海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響が和らぐことなどから、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、サービス輸出であるインバウンド需要は、増加を続けると予想される。企業収益は、既往の原材料コスト高が下押し圧力として作用するものの、経済活動の改善が続くもとで、業種・規模間のばらつきを伴いつつ、全体として高水準を維持すると予想される。そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境による下支えに加え、供給制約の影響の緩和もあって、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加を続けると考えられる。

 

今年度後半以降

今年度後半以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくもとで、経済対策の効果の減衰もあって、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。

 

家計部門をみると、雇用は増加を続けるが、これまで女性や高齢者の労働参加が相応に進んできたなかで、追加的な労働供給が見込みにくくなってくるため、その増加ペースは徐々に緩やかになっていくと考えられる。もっとも、このことは、景気回復の過程で、労働需給の引き締まりを強める方向に作用する。そのもとで、賃金上昇率は、物価上昇も反映する形で基調的に高まっていくとみられ、雇用者所得は増加を続けると予想される。個人消費は、雇用者所得の増加に支えられて、ペントアップ需要の顕在化ペースの鈍化や政府の各種施策による下支え効果の減衰によってペースを鈍化させつつも、増加を続けると考えられる。

 

企業部門をみると、海外経済が持ち直していくもとで、輸出や生産は増加基調に復していくと考えられる。インバウンド需要も増加を続けると予想される。企業収益は、内外需要が増加し、原材料コスト高による下押し圧力も徐々に和らぐことから、改善基調をたどるとみられる。そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境にも支えられて、増加を続けると考えられる。見通し期間終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴う循環的な調整圧力を受けるものの、人手不足対応の投資に加え、脱炭素化関連など、景気循環とは独立した投資が着実に増加していくとみられる。

 

この間、公共投資は、国土強靱化関連の支出が続くもとで、見通し期間を通じて横ばい圏内で推移すると想定している。政府消費については、感染症関連の支出動向を映じて、いったん減少したあと、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、次第に増加していくと想定している。

 

潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。

 

物価見通し

消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、今年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していく可能性が高い。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、振れを伴いながらも、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。

 

政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策は、今年度の前半を中心に、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を押し下げる方向に作用する一方、2024 年度については、その反動から、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。この点、エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の見通しは、2023年度に2%台半ばとなったあと、2024年度と 2025 年度は1%台後半となっている。

 

物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、小幅のマイナスとなっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、今年度半ば頃にはプラスに転じ、見通し期間終盤にかけて、徐々にペースを鈍化させつつもプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる。

 

個人的感想

報道機関がこれまで何度も何度も「出口戦略を急ぐべきだ」「金融緩和を終息すべき」「物価上昇で国民が困っているのに、まだ金融緩和を続けるのか」などと、何度も何度も日銀叩きを繰り返してきました。

今回の植田総裁に対しても似たような報道を繰り返してきました。

 

まずは、植田総裁と政策委員の皆様が、ブレない金融緩和路線を明確に示した事に、敬意を表します。

 

今、金融緩和がなぜ必要なのかは、今回の物価見通しを読めば理解できます。

これが理解できない人は、そもそも「金融緩和とは何か」が分かっていない人です。

物価見通しでは、2023年度に一度、+2.5%のインフレ率になりますが、その後はまた下落して、+1.7程度に落ち込みます。

2025年度の時点でも+1.8%程度の見通しですので、長期的安定的に+2.0以上のインフレ率は達成出来ない見通しとなっています。

金融緩和を継続するのは、当然と言えるでしょう。

 

インフレ目標政策は、金融緩和と財政出動の二本柱が無ければ、順調に成果を上げられない政策です。

個人的には、日銀は適切な金融緩和を実施していますのに、政府が十分な財政出動をしていないから、と考えます。

エネルギーや人材投資には、財政出動していますが、総額としては不十分な一方、少子化対策の財源として社会保障費増額や、財界中心に消費税増税を望む、インフレ目標政策と逆行するような世論が形成されています。

一部の官僚からリークされた情報から、誘導された世論のようにも見えます。

 

日銀の経済見通しを読んでも、政府の「社会保障費増額」や「消費税増税」「その他の増税」など、言語道断の愚策であり、そんなことをしたら一気に経済がデフレに逆戻りして、GDPは減少してしまうでしょう。

GDPが減少すれば、税収も減り、少子化対策の財源も確保できなくなるでしょう。

税収の財源はGDPであることをお忘れ無く。

 

政府は、今回の経済見通しを受けて、財政出動拡大を真剣に考えるべきだと思います。

インフレ目標達成が遅れているのは、日本銀行では無く「政府」の責任であると思います。

 

金融緩和と財政出動の足並みが揃っていません。

政府は、いつまで日銀に片肺飛行をやらせるのでしょう。

政府は「猛省」していただきたいと思います。

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